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京都・鞍馬口の現代美術ギャラリーHRD FINE ART(www.hrdfineart.com)のディレクターによるアート関係諸々ブログ。時にはアートと無関係な話題もあります。気が向いたら更新。
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地方文化通信:直島・李禹煥美術館 (1)

以前に犬島アートプロジェクトについてレポートした仁川文化財団発行の雑誌「PLATFORM」からまた原稿の依頼があって、今度は直島に今年オープンした「李禹煥美術館」についての短い記事を書いた。例によって掲載記事は韓国語に翻訳したもののみなので、ここに原文の日本語のレポートをアップしておこうと思う。

地方文化通信:直島・李禹煥美術館 (1)_a0123573_130830.jpg

地方文化通信:直島・李禹煥美術館 (1)_a0123573_1302315.jpg

***

山沿いに曲がりくねりながらアップダウンの続く舗装道路を歩いていくと、右手側にコンクリートの長い壁が姿を現す。ミニマルアートの作品のような佇まいで、風景を分断し視界を遮るこの灰色の衝立が、「李禹煥美術館」の入り口を示している。

壁沿いに刻まれた階段を下りきると、壁が切れた向こう側には海岸へと草地が広がり、そこには茶褐色の巨大な自然石と鉄板を対置させた李禹煥の立体作品「関係項―対話」が置かれている。振り返ると、無機質な灰色の目隠しに見えたコンクリートの壁が、風景に違和感なく溶け込み、李の作品の延長のようにも見えてくる。ここが豊かな直島の自然の風景をもその中に取り込んだ、やわらかく開かれた「場」であること――何を閉じ込めるでもなくただそこに立つ端正なそのコンクリートの壁が、そんなこの美術館のあり方を示唆していることに気付かされる瞬間だ。



「ベネッセハウス ミュージアム」(1992年開館)、「地中美術館」(2004年開館)に続き直島の美術館としては3館目となる「李禹煥美術館」は、直島では初の個人美術館であり、韓国出身の美術作家・李禹煥自身にとっても自らの作品だけが並ぶ初めての恒久展示となる。建築を担当したのは、日本を代表する建築家・安藤忠雄だ。

李禹煥、安藤忠雄ともに、改めて詳しく紹介する必要のないほど著名な存在なので、ここでは簡単にその業績についてまとめるだけにとどめたい。李禹煥は韓国・慶尚南道出身、若くして渡った日本を拠点に活動し、近年はフランスを中心としたヨーロッパでの制作・発表を通じて、国際的にその名を知られている。2011年にはニューヨークのグッゲンハイム美術館での個展も予定されている。日本大学の哲学科卒であり、日本の20世紀美術の最も重要な運動のひとつ、「もの派」の理論的主導者となるなど、理論家でもあり論客でもある、異能のアーティストだ。
 安藤忠雄もその経歴の異色さでは李禹煥と通じる、むしろ李を上回るとも言えるだろう。大阪出身の安藤は高卒で、建築は独学で身に付けた。よく取り上げられるようにプロボクサーだったこともある。今や世界で最も影響力のある建築家のひとりとして数えられ、近年は美術館などの公共施設や巨大プロジェクトの仕事も多い。「李禹煥美術館」に先行する直島の2つの美術館も安藤の手によるものだ。

コンクリートの柱がシンボル的にそびえる「柱の広場」から、安藤建築の代名詞ともなっているコンクリート打ち放しの高い壁に囲まれた回廊を通り、天井のない半屋外の「照応の広場」から展示室内へと、導線の中に李の作品が自然な形で存在している。「李禹煥美術館」では、建築は作品を並べて展示するためだけの容れ物ではなく、李禹煥の作品世界をより深く体感するための場の創造に積極的な役割を果たしているのだ。その意味で、一人のアーティストの作品を紹介しその活動を顕彰する、従来的な意味での個人美術館とは大きく趣を異にしている。

1970年代から2009年までの平面の代表作を展示した一室(「出会いの間」)を除いて、すべての展示室には作品が1点だけ展示されている。そしてそれらの作品はすべてこの美術館の、その部屋のために制作されたものだ。いや、「その部屋のために」という言葉はふさわしくない。建物と作品が主従関係ではなく一体として在ることで、さまざまな思索にふけることのできる豊穣な時空間を創出しているのだから。

(2)につづく
by hrd-aki | 2010-10-18 01:34 | 雑感
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