「改装のこと (1) 壁の中の新聞」でも書いたように、HRDファインアートは築90年超という古い町家づくりの家を部分的に改装してギャラリーとしている。
1世紀近い歴史の中で改装や改造を繰り返してきたこの家にホワイトキューブ風の展示スペースをつくり出すにあたって、従来の壁の上に新しく板壁を設置することにした。もともとは土壁に漆喰を塗って仕上げた塗り壁があり、その上におそらく戦後の改装で洋間風の板張りが施されている。今回はその上にさらにベニヤの壁を仮設のパーティション的に取り付けたので、場所によっては壁が3層構造になってしまった。本来、日本家屋の土壁、漆喰壁というのは内外で湿気を通過させる「呼吸」のような機能を担っているらしいので、その上に板が重ねられている現状はあまりよろしくはないのかもしれない。漆喰壁の雰囲気は魅力的だけれども、釘を打つことができないのでギャラリーの展示スペースとしてはあまり機能的ではない。難しいところだ。
それはさておき、古い木造の家なので、いろいろなところにガタつきが生じている。要は傾いているのだ。壁も天井も真っすぐではないので、仮設壁を取り付けるにあたっても垂直・水平の基準をどこに取るかが問題になる。今回は垂直を基準に板を貼っていくことにしたのだが、そうすると天井と床に接する水平面にズレが生じる。
天井。
床。
本職の大工さんであればそのあたりもきっちり計算して板を切り出して、ということができるのだろうけれど(現にこの家の改装の痕跡を見て行くと、細かいところに歴代の大工さんの苦心・腐心のあとが随所に伺えて微笑ましい)、素人大工なのでそこまでの高等技術はもちろんなく、能力の限界そのままにズレたものはズレたままになってしまっていた。
作品を設置してしまえば壁に注目する人などほとんどいないのでさほど気にはならない。そうは言ってもやはりあまり見映えのいいものではないので、4月スタートの展覧会を前に廻り縁と幅木をつけて目隠しをすることにした。
こんな感じ。
ちなみに廻り縁という言葉は今回これを書くにあたって調べて初めて知った。4月からの展覧会「ヤミ」のオープンまでには間に合って、多少きれいになった姿をお見せできる予定。ただ昨日、木材の調整中に左手をノミでざっくり切り裂くという大失態をしてしまったので、やや作業に遅れが生じてしまっている。間に合うかな?