荻野さんの個展が開催された耕心館は、東京都西多摩郡瑞穂町というところにある。アーティストトークが行われた8月9日に初めてここを訪れた。
この耕心館、「複合文化施設」とでも呼ぶべきところで、ギャラリーでは展覧会、コンサートホールでは演奏会などが定期的に開催され、レストランもあり、また庭園もきれいに手入れされている。規模は大きくはないけれど、古民家風の建築も興味深い。
耕心館のウェブサイトには、
「周囲に塀をめぐらし、豪壮な母屋と二棟の土蔵から成るこの邸宅は、屋敷森に囲まれ、武蔵野の旧家のたたずまいを残しています。母屋の原型は、江戸時代末期の築造で、当時豪農として、その後醤油醸造業、養蚕業が営まれました。現在の2階は、演奏会・展覧会のための整備がなされましたが、養蚕のための家屋構造が確認できます。離れ和室は、大正時代に増築されたもので、特に和室の書院障子の木組みなどは、大正時代の建具の実例として貴重なものです。」
とある。
パンフレットにはその後の沿革として、
「昭和50年代にフランス料理店として大幅な改装を経て、平成12年、瑞穂町が取得し、整備したのが現在の耕心館です。」
と説明されている。
なるほど、大きな梁や柱など昨今流行の古民家移築建築のようにも見えるのだけれど、ここは「古民家風」とか「移築」とかではなく、その場でオリジナルの建物を改築しながら使われてきたもののようだ。現在は指定管理者制度のもと、アクティオ(株)という会社が管理運営している。
荻野さんの展示は、庭園で栽培されている山野草のイメージを取り入れた新作もあり、建物の雰囲気ともしっくりマッチしていた。そしてアーティストトークは、聞き手に「町中アート大学」を主宰している毛原大樹さん(
http://mnau.to)。毛原さんは荻野さんの東京芸大の後輩で、旧知の間柄ということもあってか、トークは終始リラックスしたアットホームな雰囲気。それでも制作の核心に触れる話もいろいろと出てきて、なかなか勉強になった。
こういう機会でもないかぎりなかなか行くことのない場所だけれど、耕心館も心地よい場所だったし、荻野さんの新作も新しい方向に進んでいるように感じられたし、暑い中電車を乗り継いで足を運ぶだけの価値は十二分にあったと思う。
荻野さん、皆さん、おつかれさまでした。
耕心館のウェブサイト
http://www.koshinkan.jp/