今月初めに東京に行った際に見てきた展覧会のひとつが「木村了子式婚活Date♥双六Start!」。清澄白河の倉庫ビル=ギャラリービルの中にあるキドプレスという版画工房での展示だった。
木村了子はエロティックな情景や場面に置かれた美男子を赤裸々に描いた作品で知られる画家だ。普段は日本画の技法と画材で屏風絵などを制作している人だが、今回の展示ではリトグラフの版画シリーズを発表していた。それが「婚活♥双六」。
実際に双六盤の挿絵として制作されている一連の版画で、アジアのイケメン俳優・歌手をモデルにした美男子を相手に「婚活」に取り組む様々な情景が描かれている。
スタート(振出し)は縁結びの神様にお参りする場面(有名な東京大神宮あたりかな?)、「あがり」は晴れて結婚式、といった感じで、このあたりのヒトを喰ったような笑いの感覚がこの作家の最大の持ち味・魅力と言えるだろう。
登場するデートの相手たちは、これは韓流スターかな、これは香港の俳優とかかな、と想像しながら見て行くけれど、残念ながらその方面の知識が薄いのでモデルの特定まではできず。それでも、メディアが生み出すスター像とそれを支える大衆の欲望の在り処を端的に示していて、そういう欲望の対象に向き合う作家自身もドライとウェットが絶妙に交錯した態度を見せているようで、ただの没入でもなく、ただの風刺や批評にも終わらない、綾織りなすような知的な面白さがある。
透明アクリルに刷った人物像を前面に、紙に刷った背景と重ねてひとつの額装とする展示方法(制作手法)も興味深い。アクリル板にあんなふうに鮮やかにリトグラフの色を乗せられるとは知らなかった。
まだ双六全体としては半分くらいしか仕上がっていなかったので、完成図がどのようなものになるのかが楽しみだ。一緒に見に行った韓国人の友人は、双六よりも一緒に展示してあった虎とターザンの図がいたくお気に入りのようだったけれど。
木村さんには5月にソウルで開催する「GOLD EXPERIENCE」と題したグループ展にご参加いただくことになっている。画材としての金箔に焦点を当てた展示で、木村さんからは新作が発表される予定なので、そちらも期待大。
「木村了子式 婚活♥Date双六 Start!」は清澄白河のキドプレスにて5月8日まで開催。
http://www.kidopress.com