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「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である」展
(追記あり)
京都国立近代美術館で開催されている「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である - ヤゲオ財団コレクションより」をようやく見に行くことができた。東京国立近代美術館、名古屋市美術館を経て、京都が最後の巡回先となっている。 東近美での開催に合わせてNHK教育テレビ(今はもうこの呼び名ではないのかな?)の「新日曜美術館」の展覧会紹介コーナー「アートシーン」で取り上げられていたのを見たのはずいぶん前のような気がするのだが、そこで東近美の企画担当学芸員がしゃべっていたのが、ざっくりと「この展覧会は美術作品の価格と美術史上の価値の間には関係がないということを見せるための展覧会です」というようなことだったので、「え?」と思っていたのだけれど(録画もしていないしネット配信もされていないので不確かな記憶に基づいて書いていることを断っておきます、不正確だったら訂正します)、実際に見てみるとやはり「え?」と思うような展覧会であった。いや、「え?」というよりは「あれ?」であった。 ヤゲオ財団とは何かとか、どういうコレクションなのかとかいった背景情報はここでは省かせていただくとして、感想としては、面白くない展覧会ではなかったことは言っておきたい。出品されている作品はほとんどすべてが有名どころで(中国系の作家は知らない名前ももちろん多かったけれど)、しかもコレクションの全作品を展示しているわけではないだろうから、おそらくこのコレクターが亡くなったら(失礼)バイエラーやらリウムやらのように大規模な私設美術館を設立することになるのだろうと思わせるような質と量のコレクションであることが窺えた。いわゆる現代美術にカテゴライズされる作品群をこれだけの密度で見られる機会は日本ではあまりないことは確かだろう。作品の前で良い時間を過ごすことができる。 しかしながら、「名作を鑑賞するだけでなく、作品の『価値』とはなにかを考える場にもなっている」(展覧会のフライヤーより)という、「空前絶後」(同)と企画者が自賛する仕掛けは2つの点で肩すかしに終わっている。 展示作品が「現代美術のハードコア」というよりもむしろ価値(あるいは評価)の定着したエスタブリッシュメントが大半であるということがひとつ。「現代美術」という言葉は広範な定義をはらんでいるけれど、少なくとも例えばマン・レイが今の時代の「現代美術」のコアに位置していると主張するのは無理がある。トゥオンブリーにしてもベーコンにしてもすでにクラシック的な扱いを受けている作家だ。家に飾れるものというコレクションの方針のために映像やインスタレーションは一切ないというのも、「これがハードコア?」と首を傾げたくなる。 (追記2:会場最後の展示作品はリー・ミンウェイによる観客参加型のインスタレーション作品なので、「インスタレーションは一切ない」は「ほとんどない」に訂正します。それと、なぜエスタブリッシュされた作家の作品ばかりだと片手落ちなのかというと、後述のとおりそういった作品がいくらで取引されたとかどこの美術館がいくらで購入したとかいう情報はすでに相当程度オープンになっているから。つまり「空前絶後」と呼ぶにはふさわしくない、ということ。) もうひとつは、アートマーケットの「コア」にまで踏み込むような内容では到底なかったということ。50億円という巨額の資金を投入して構築されたコレクションであるということを声高に喧伝するのであれば、その作品1点1点について、実際にいくら払って購入したものなのか、誰から買ったものなのか(少なくとも画廊なのかオークションなのか作家本人なのかぐらいの情報は出せるはず)、もし今売却するとすればどのくらいの値段になるものなのか、なぜその値段になるのか、オークションハウスの専門家の値踏みの根拠は、また持ち主のピエール・チェンさんはいくらだったら売ってもいいと考えているか、といったような情報まで見せてくれないと、見る側としては極めて物足りない。「この作家の作品は最近のオークションで〇〇円で落札された」というような一般情報は、「空前絶後」の展覧会で教えられなくても知っている人は知っているのだから。 税金とかマネーロンダリングの問題とかがあって細かい情報は一切出せないというのであれば、それはまた別の意味で「空前絶後」ということになっていたかもしれないし。 (追記1:僕はやらなかったのだけれど、展示会場の最後に「コレクター・チャレンジ」というゲームが用意されていて、それは「そこには、本展から選んだ20点の作品と家の模型が置いてあります。そして作品を複数選んでいただくと(上限5点)、本展が独自に算定した市場評価額の合計金額が出るようになっています」(会場で配られている展示ガイドより)というようなものらしい。これで一応は「今売却するとすればどのくらいの値段になるものなのか」という情報がぼんやりとではあっても提示されているとは言える。しかしコレクションの構築に関して興味があるのは今いくらになっているかよりも当時いくらで買ったか、あるいはその両方だと思うのだが。) 前述のとおりテレビ番組で企画者の口から語られていたこと(そして僕が記憶していること)が企画者の本音なのだとすると、展覧会の枠組自体があまりにも空々しくて苦しい。展示室内に張り出されていたヤゲオ財団からのメッセージには、作品の価格と価値(評価)の関係性については一言も触れられていなかった。それはそうだろう、そんなことを「考える場」としてこの展覧会に作品を提供したわけではないはずだから。 ショップで立ち読みした(ごめんなさい、買う気になれなかったもので、でも買えばよかった)図録では、チェン氏が20歳くらいの頃に初めて台湾のギャラリーで購入したという彫刻作品のことが触れられていた。購入価格には触れられていなかったと思うが(これも片手落ち!)、20歳の若者が買うのだからきっとそこまでの高額な作品ではなかっただろう。そしてこの作品をチェン氏は今でも大切に飾っているのだという。せめてその作品を他の超高額作品と一緒に展示してくれていたら、そしてその値段も提示してくれていたら、アート作品をコレクションするということのパーソナルでロマンチックな側面がくっきりと浮かび上がって、それだけで魅力的な展覧会になっていたはずなのに、と思った。 もうひとつ気になったのは作品の照明のこと。いくつかの作品(大判のキャンバス作品)は明らかに照度が低い上に四隅にまで光が当たっていない。と思っていたら常設展の展示のほうに「全館の照明をLEDに切り換えました」という掲示があって、目の慣れの問題かもしれないけれどLEDは美術館の作品展示には向かないのかな、などと感じたのだった。 会期は明日(5月31日)まで。 http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2014/406.html
by hrd-aki
| 2015-05-30 17:31
| レポート
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