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パリ、1996年、2000年
22歳の3月にパリに数日間滞在した。1996年のこと。初めての海外だった。地下鉄を乗り間違えたりして、サンラザール駅近くのホテルに到着したのは深夜のことだった。ホテルのフロント係の若者は、僕が美術史の学生だと話すと、自分はバスチーユの近くで現代美術のギャラリーを運営していて、収入のためにホテルでアルバイトをしているのだ、と話してくれた。その当時は現代美術には全くと言っていいほど興味がなかったし(だから彼が住所を教えてくれたギャラリーにも行かなかった)、自分もいずれギャラリーをやることになるなどとは夢にも考えていなかったのだから、不思議なものだ。
2000年、再びパリを訪れた。今度は旅行代理店のフリーツアーみたいなものを利用したので、帰国の日にはホテルから空港までの送迎サービスがついていた。安ホテルの狭いロビーで待っていると、現れたのは上下アイボリーホワイトのスーツに身を包んだ細身のかっこいい若者だった。まだ十代かと思うくらいの見た目で、僕も若く見える(見えた)ほうだけれど明らかに彼は僕よりも年下だった。肌の色からも身なりからも北アフリカ系であることは疑いようがなかった。なまりはあるものの英語をすらすらと話す。「ミスター・アハダは君か?」と聞いてきた。HARADAをフランス語的に発音するとそんな感じに聞こえるのだ。 彼が乗ってきた車はごく普通のセダンで、自家用車といった趣だった。きっと自分の車をこうして仕事にも使っているのだろう。今日乗せる客は僕一人なのだという。空港までの数十分間の二人きりのドライブで、自然といろいろ話をした。名前も聞いたような気がするけれど、もう忘れてしまった。自分でアルジェリア出身だと言っていたような気もする。 日曜日のパリはお店がほとんど閉まっていて困った、と話すと、それは今が「パック」だからだ、と言う。「パック」というのはイースターのことだ。4月下旬、確かにちょうどその年のイースターの時期に当たっていた。そう言われるまで全く意識していなかったので、なるほどと思い、フランスではイースターにはいろいろお祝いしたりするのか、と訊いてみた。返ってきた言葉は、「オレはムスリムだからよく知らないよ」というものだった。 なんだかとても失礼な、無神経な話をしてしまったようで、自分が恥ずかしくなった。ところが彼は特に頓着する様子もなく、話の流れそのままに「日本にはムスリムはたくさんいるのか?」とか「君はどんな宗教を信仰してるんだ?」などと質問してきた。僕が無宗教だと答えると、「神は信じたほうがいい。どんな神でもいいからね」と、大真面目な顔で忠告してくれた。ちょうどそのタイミングで車がシャルルドゴール空港に到着したことを覚えている。あるいは、ターミナルの前に車を停めて、僕の荷物を下ろしているときにそんなことを言ってきたのだったかもしれない。 当時は中東情勢の中心はパレスチナで、今ほど全体的に混迷を極めてはいたわけではないけれど、ヨーロッパではアフリカや中東からの移民の増大とその社会的受容がすでに大きなテーマになっていた。この2年前の1998年に母国で開催されたワールドカップで優勝したフランス代表チームは(アルジェリア系移民の子であるジダンをはじめとして)移民やその子孫が大半を占めていて、多文化主義を象徴しているとして話題になったりした。15年前も、15年後の今も、問題の本質は大きくは変わっていないように思う。 19年前と15年前。その後も何度か訪れたけれど、パリは何か僕の中に特別な感情を抱かせてくれる場所になっている。
by hrd-aki
| 2015-11-15 02:36
| 雑感
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