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TQとJQ昨年12月に台湾の高雄でアートフェアに出展したときに通訳としてお手伝いしてくれたLさんからは、台湾にまつわる様々なことを教えてもらって勉強になったのだが、そのひとつが「TQ」という言葉だ。「Taiwan Quality」の頭文字を取ったもので、台湾人らしい気質の表れた、いい加減で適当な対応や態度、習慣などを自嘲気味に表現した言葉で、一種のネット用語なのかもしれない。韓国でも、即断即決でせっかちな社会風潮を「Korean Style」と呼ぶ人がいるけれど、それと似たような感覚だろう。逆に綿密できっきりとした物事の運び方や対応を「JQ」と呼んだりするらしい。こちらは「Japan Quality」の略だ。 高雄に数日間滞在して、確かにいろいろと「緩い」対応を目にし、体験することはあった。例えば、レストランに食事に行こうとアートフェアの会場からタクシーに乗ったときのこと。走り出したタクシーが何やら横道にそれたかと思うと、なんとガソリンスタンドに入っていくのだ。客を拾ってから給油をするタクシーというのは日本では(よほどの長距離でない限り)なかなかお目にかかれないだろう。 かき氷の屋台も面白かった。そのお店には「午後3時からオープン」と張り紙がある。行ったときはまだ2時にもなっていなかった。開店まで1時間以上ある。アートフェアの会場に戻らないとならないので、そんなに待つわけにはいかない。ところが、Lさんに隣の麺屋さんのおばさんに聞いてもらうと、「2時には開くよ」と言う。そして果たして、間もなくかき氷屋の店主のおばさんがやってきてせっせと準備を始め、本当に2時には僕たちもおいしいかき氷にありつくことができた。 行きたいと思った海鮮のお店が2日連続で閉まっていて(「臨時休業」などの掲示は一切なし)、結局行けずじまいだったという、逆のパターンもあった。 台湾の人に言わせると、同じ台湾の中でも地域差があって(まあ当たり前だ)、南部にある高雄の人々は北部の台北などの人々と比べると土着的な気質が強い、ということもあるらしい。よりTQ的な雰囲気が強いと言い換えてもいいのかもしれない。こちらがひとときの旅行者にすぎないからなのか、あるいは温暖な気候でこちらも気分がオープンになっていたせいなのか、「TQ」に直面しても、面白いとは思ったものの、特に腹が立ったりイライラしたりはしなかった。もちろん人によっては我慢がならないということもあるのかもしれないが、少なくとも僕個人は嫌な気分にはならなかった。 日本的な「きっちり」「几帳面」、言うなれば「JQ」は、それが実際に日本人の全体的な気質と呼ぶことができるものなのかどうかは疑わしくもあるけれど、すでに国際的にも「日本のイメージ」の共通認識として受け入れられている感がある。「日本は/日本人はきっちりしていなければならない」という無言の規範として、日本社会全体を圧迫しているようにすら思う(これは現代アートにも言えることなのだけれど、ここではやや脱線になるので深入りはしないでおこう)。 日本もよく知るLさんが「これもTQですね」と言うとき、そこには自国文化に対する自嘲や、海外からの客人に対する自己弁護的なエクスキューズももちろん含まれるのだろう。しかしそれ以上に僕が感じたのは、TQ的なものを笑って許す余裕、度量の大きさのようなものだった。「まあ別にいいじゃない」と思えば、ピリピリと無駄に神経をすり減らすこともない。怒ってネガティブな気分になることもない。そして、ネガティブな気分よりもポジティブな気分のほうが、生み出せるものははるかに大きいし、きっと美しい。 日本が空港のトイレの清潔さを自慢するようになったのはいつ頃からなのだろうか。人間や社会が費やせるエネルギーの総量は決まっているはずだ。きれいなトイレとか、秒単位で正確な鉄道の運行とか、絶対に休まないコンビニとか、そんなことに過剰なエネルギーを注ぎ込んでいるうちに、もっと大事なことに注ぎ込むべきエネルギーが削り取られて足りなくなってしまう。そうやってJQを追求した末にたどり着いたのが、今の日本社会の閉塞感なのではないか。 ないものねだりなのかもしれないし、隣の芝生が青く見えるだけの話なのかもしれないが、台湾・高雄の夜市ででかい牡蠣を肴に紹興酒のグラスを傾けながら、そんなことを考えていたのだった。 *** おまけ。TQな(?)ストリートアート。すごい。かなり良い。
by hrd-aki
| 2020-01-09 03:09
| 雑感
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