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次回展覧会:南條敏之個展「shelterbelt 〜 亭々と/点綴と」HRDファインアートでは、2020年最後の(そして2021年最初の)展覧会として、写真作家・南條敏之の個展「shelterbelt ~ 亭々と/点綴と」を開催します。本展では、日本各地の海岸防砂林の風景を捉えたシリーズ「shelterbelt」の作品を約20点展示します。2011年の東日本大震災によって被災した地域で撮影された作品も含まれます。 南條敏之は1972年東京生まれ。自然や風景を中心的なテーマとし、高度な写真技術をベースに、精緻で静謐でありながら、詩的な余韻も感じさせる格調の高い画面の写真作品で知られています。長年にわたって取り組み続けてきた水面に映る太陽の光の痕跡を捉えた「suns」のシリーズに加え、近年では新たなテーマとして海岸防砂林に着目した「shelterbelt」のシリーズにも力を入れています。 海岸防砂林は、近世以降の日本の沿岸部で人の手によって植えられ整備されてきた人工林であり、いわば「改変された自然」です。松など、沿岸部の痩せた土地でも育ちやすい木を植林して障壁を設けることで、人間の居住・経済環境への砂や風、塩の侵入を阻止することを目的としていました。現在ではその役割も変質し、自然景観保護の対象となっているものもあります。日本人は伝統的に(西洋文明とは異なり)自然と共存する関係を築いてきた、という言説が昨今流布していますが、そうした一面的な「日本人の自然観」に、南條はこれらの作品を通じて小さな疑義を投じています。 自然とは何か。人工とは何か。そしてそのそれぞれの「美しさ」とは何か。南條敏之の写真作品は、私たちが自然や風景に向ける眼差しを揺さぶり、より豊かなものへと改変するのです。 *** 《アーティストからのメッセージ》 防砂林は「白砂青松」などとよばれ、日本人と自然との調和や共生を象徴する風景の一つとみなされています。しかし、その歴史はそれほど古いものではなく、多くは17世紀ごろから造られ始めました。明治維新・恐慌・太平洋戦争を節目に、いくつもの松林が姿を消していきました。戦後、再び植林が始まった防砂林は密度が高く、風景を遮断しています。津波によって多くの海岸林が失われた被災地では、整然とした構造物としての松原の再生が進んでいます。 砂と風を引き受けうねり、傾いてしまった松を眺めていると、「日本人の自然観」の側面が見えてくるように思います。日本人と自然との関わり方に、もう一度丁寧に、緻密な眼差しを向けなおす必要があるのではと思えてくるのです。 (南條敏之) *** 本展開催に合わせて、「shelterbelt」シリーズの作品を収録した写真集を刊行予定です。現在鋭意制作進行中で、年内の完成を目指しています。詳細はこのブログでも追ってお知らせします。 ちなみに、展覧会タイトルの「亭々と」は「樹木などが高くまっすぐに伸びているさま」を、「点綴と」は「ほどよく散らばっているさま」を意味する言葉です。
by hrd-aki
| 2020-12-15 03:40
| おしらせ
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