ギャラリーとして使っている町家は築90年以上という、ちょっとした骨董品だ。といっても記録は残っていないらしく、正確な築年数はわからない。改装のために木の壁をはがしたら、その下から出てきた土壁に貼られていた新聞に「昭和2年」の文字が読み取れたので、その前後に建てられたものだろうと推測される。昭和2年は1927年なので、今から数えると94年前。ということを以前のブログ(
「改装のこと (1) 壁の中の新聞」)に書いた。
長い年月の間に様々な人が住み、様々に手が加えられてきているので、建てられた当時の状態を保っている箇所はおそらくそれほど多くはない。その中でも、玄関の壁を貫通して設置されている新聞受けはおそらくかなり古いものなのではないかと思われる。
「郵便新聞受」(?)と書かれた銅製(?)の扉がなかなか趣がある。ところがこれ、畳んだ新聞をさらに2つ折にしたくらいの幅しかないので、通常の郵便物であっても大きな封筒に入ったチラシやカタログ、書籍などは折らないと通らない。厚みがあって折れないものは投函できないので、不在のときに配達されると持ち戻りになってしまい、再配達や郵便局での受け取りにいかなければならなくなる。
これではちょっと不便なので、以前ここを住居兼事務所として使っていたときは手作りの青い郵便受けを設置していたのだが、住居としては使わなくなった際にそれは撤去してしまい、その後ギャラリーとしてオープンしてからも郵便受けは取り付けていなかった。この写真に写っているのが以前の郵便受け。出窓に飾られているのは栗原亜也子のオセロペインティング作品(詳しくは
こちら)。
で、昨年末、ようやく新たに郵便受けを再製作して設置した。これでA4サイズまでなら大判のチラシや本も心置きなく送っていただけます。
型板ガラス風の前面の窓は、ここに移ってきたときにもともとあった昭和なプラスチック製の蛍光灯のカサを解体して取り付けたもの。ギャラリーオープン中は開放した玄関扉で半分くらい隠れてしまうし、特に機能的な意味はないのだけれど、これもこの場所の記憶の記録として、ギャラリーにお越しの際はちらりと目に留めていただければと思う。