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京都・鞍馬口の現代美術ギャラリーHRD FINE ART(www.hrdfineart.com)のディレクターによるアート関係諸々ブログ。時にはアートと無関係な話題もあります。気が向いたら更新。
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「意図せぬ因果関係」のこと (2) ルーン文字考

(1)からのつづき

「意図せぬ因果関係」の展示作品については、ギャラリーのウェブサイトやプレスリリースの展覧会案内でも少し説明しているし、YouTubeで公開しているzoomインタビュー動画(ギャラリーでは半分ほどの長さのダイジェスト版を上映中)でも詳しく語られているので、ぜひそちらをご覧いただきたい。で、ここではその動画でも触れられていない、ルーン文字にまつわるあれこれについて書いてみようと思う。

***

ルーン文字。ゲルマン民族が用いた古代文字で、ヨーロッパ、特に北方を中心に広い範囲で使われていた。というぐらいの浅い知識なら僕も持っていた。子供の頃によく遊んでいた「ゲームブック」の舞台となる剣と魔法のファンタジー世界(ダンジョンズ&ドラゴンズ、つまり「地下牢と龍」の世界)には、しばしばルーン文字が暗号や呪術的な意味合いで登場していたので(例えば羊皮紙の地図に書かれたルーン文字を解読しなければ冒険の旅を先に進めることができない、とか)、「ルーン文字」という言葉自体には馴染みはあった。今でもコンピューターゲームのRPGなどではギミックとしてルーン文字(的なもの)が使われているのだろうし(ゲームブックはRPGの原型みたいなものだ)、有名な『ハリー・ポッター』のホグワーツ魔法魔術学校の教程にもルーン文字の授業があるらしい。

が、今回この展示を開催するにあたってインターネットでいろいろと調べてみて(便利な時代!)、初めて知ったことも実にたくさんあった。ルーン文字には地域や時代によって多様なバリエーションがある、ということもそのひとつだ。今回ゲリーが作品に使っているのはノルディック(北欧)系のルーン文字とされているもので、24文字でひとつのアルファベットとなっている。

これはゲリーが使用した24文字のルーン・アルファベットと現代のアルファベットの対応表。これはギャラリー内にも掲示している。

「意図せぬ因果関係」のこと (2) ルーン文字考_a0123573_23481408.jpg

ただし、ルーン文字の起源や変遷についての研究はいまだに発展途上、まさに文字通り「諸説ある」という状態で、どうやら後世に後付けで解釈が付け加えられたり、改竄や捏造に近いようなことも行われてきたようなのだ。

そんな「捏造」の例のひとつと言えるのが、今回のゲリーの作品でも使われているこの文字。

「意図せぬ因果関係」のこと (2) ルーン文字考_a0123573_23392103.jpeg

実はこの文字、厳密にはルーン文字ではない。「Wolfsangel」(ヴォルフスアンゲル?)と呼ばれる記号で、もともとはオオカミを捕獲するための罠をかたどった記号であり、紋章などにも使われていた(今でも欧州各地で地域の紋章の一部として使われているケースがあるらしい)。これを悪名高いナチスの「第2SS装甲師団」がシンボルマークとして採用した。もしかするとナチスもこれをルーン文字だと勘違いしていたのかもしれない。ここでは敢えて実物を挙げることはしないが、第2SS装甲師団のエンブレムは検索すればすぐに確認することができる。

いずれにしても、ルーン文字よりも歴史が新しく、厳密な意味では文字ですらないこの「ヴォルフスアンゲル」が、どこかのタイミングでルーン文字のアルファベットに紛れ込み、ナチスによって利用され、そして今日に至っているということのようなのだ。

実は僕が調べて指摘するまで、この事実をゲリー自身も知らなかったようで、面白がってくれた。ゲリーが制作上の重要なテーマとしてインタビューの中でも語っている「ミスリード(欺き)」がここでも期せずして生まれているとも言えるわけで、とても興味深い発見となった。

ヴォルフスアンゲルに関するWikipediaのページはこちら(英語版):

現代のドイツでは、ナチスによる犯罪の象徴として「スワスティカ」すなわち鉤十字(ハーケンクロイツ)の使用が禁止されているというのは広く知られている事実だが、それと並んで、ナチスがシンボルとして利用した一部のルーン文字も使用禁止になっている。これも今回初めて知ったことだ。「Hate Symbol Database(ヘイト・シンボル・データベース)」という反ヘイト団体が運営しているウェブサイトにも、ナチスや極右と関連付けられるルーン文字が「ヘイトのシンボル」としていくつか紹介されている。「ヴォルフスアンゲル」も当然そのひとつとして挙げられているのだが、このサイトでもルーン文字のひとつとして紹介されているのが興味深い。

***

欧州各地にはルーン文字が刻まれた古代の石碑のようなものが数多く残されている。ルーン文字のほぼすべてが直線の組み合わせのみで構成されているのは、木の板や岩石の表面に刻み込んで使用した文字であり、直線のほうが彫り込みが簡単だからという理由なのだが、もともとの起源としては木の枝を組み合わせて地面に置いた記号から派生した、という説もあるようだ。

いずれにしてもその直線的なラインはシャープで、ある種モダンな雰囲気もある。ナチスが軍事国家のシンボルとしてルーン文字を使用したのも、純粋ヨーロッパの民族的正統性という思想的な意味合いだけではなく、意匠としてのシャープさ、かっこよさも理由のひとつだったのかもしれない。

そして、ゲリーの作品ではその直線的なラインがポルノ写真の裸体の複雑な曲線と組み合わされることで、あたかも人間の生身の肉体が鋭利な刃物で切り刻まれているかのような印象を受ける。戦争の暴力性を想起させる効果もあるように思えるのだ。これはゲリー本人に聞いたわけではなく、偶然に過ぎないのかもしれない。その意味ではこれも「意図せぬ因果関係」だと言えるだろう。


(3)につづく

by hrd-aki | 2021-11-17 00:09 | ギャラリー
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