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京都・鞍馬口の現代美術ギャラリーHRD FINE ART(www.hrdfineart.com)のディレクターによるアート関係諸々ブログ。時にはアートと無関係な話題もあります。気が向いたら更新。
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「Interface」展の作家・作品紹介

気がつけば2023年ももう3月。いつもよりも会期の短い「Interface - 界面 -」展はあっという間に最終週、実質残り1日となってしまった。なので、かなり遅ればせではあるものの、出品作家と展示作品について駆け足で紹介と解説をしておこう。

「Interface」展の作家・作品紹介_a0123573_17562092.jpg

この展覧会は、コロナパンデミック直前の2020年2月に開催した「Framework」展の第2弾、続編的な位置付けで、その時の作家4名(日本の須貝旭、韓国人のキム・ヒョングァン、イ・ジュンヒョン、チャン・スジョン)に栗原亜也子が新たに加わった、5人の作家によるグループ展だ。ただし今回、3人の韓国人作家の作品は、3年前の展示とはかなりスタイルの異なる作品となっているので、前回の展示を見ている人でもなかなか今回の展示と結びつかないようだ。そこで、「Framework」展の展示作品にも触れながら、作家ごとに紹介していこうと思う。

では、まずはキム・ヒョングァン。前回はモデリングソフトを使って作成した建築的3次元オブジェを出力した「絵画」を展示していたが、今回は「Interface」の「face」、すなわち顔をテーマにした4点の作品を出品している。2点の《Untitled》は、カーボン紙を使ってギリシャ彫刻の頭部をトレースしたドローイングで、2つの違う人物像を重ね合わせ、機械的に線をなぞっていくことで作家性をぼやけさせている。また《medusa》と《bearded man》はアクリル絵具を入れたビニール袋の端を切って中身を紙の上に垂らすことで描いた、というか描かなかった作品で、コントロールできない液体の物理的な動きと作家の意図とのせめぎ合い、そしてできあがった模様が顔のように見えてしまうという鑑賞者の視点をも取り入れた構造になっている。キム・ヒョングァンは自らの制作を「アンチ・ペインティング」と規定している。描かないことによる絵画、とでもいうような感覚なのだろう。

「Interface」展の作家・作品紹介_a0123573_17562166.jpg
キム・ヒョングァン《Untitled 2》(左)と《Untitled 1》(右)

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キム・ヒョングァン《bearded man》(左)と《medusa》(右)

続いてイ・ジュンヒョン。「Framework」では、キャンバスの木枠でつくったいかだでソウルの大河・漢江に漕ぎ出す様子を捉えたユーモラスで不条理な映像作品を展示していたのだが、今回はうってかわって絵画を出品。ただしそれも正統な絵画作品ではなく、雑誌に載っていたファッション写真を段ボール箱の蓋に描くという、ダダ的な趣も感じられる作品だ。絵画や映像、インスタレーションなど多彩なメディアを駆使して、普段見慣れたものの角度や組み合わせを変えることで新たな体験や感覚を生み出そうとする、声高ではないが芯の通ったイ・ジュンヒョンならではの作品世界が垣間見える。

「Interface」展の作家・作品紹介_a0123573_17562153.jpg
イ・ジュンヒョン《untitled》(どちらも)

「Interface」展の作家・作品紹介_a0123573_17562196.jpg
イ・ジュンヒョン《untitled》の細部

本展の共同企画者でもあるチャン・スジョンは、前回の展示では金の取引価格と暦とを組み合わせたチャートのような作品を出品していた。今回は映像作品で、プログラミングコードによってモザイクのような画面が自動的に生成される様子が記録されている。ここでも、アーティスト自身は絵を描いてはいない。チャン・スジョンが作成したのは文字の羅列のコードで、そのコードを実行することでコンピューターに絵を描かせている。この場合、コードが作品なのか、出来上がったイメージが作品なのか、どちらなのだろう? AI絵師が描いた作品の作家性や著作権に関する話が取り沙汰されている昨今、作品の実体性についての問いを投げかけるタイムリーな作品とも言えるだろう。

「Interface」展の作家・作品紹介_a0123573_17562763.jpg
チャン・スジョン《constitution of the 12th》

「Interface」展の作家・作品紹介_a0123573_17562709.jpg
《constitution of the 12th》のためのコードもプリントアウトして展示している

続いては日本人作家をご紹介。須貝旭は「Framework」にも出品した作家で、銀箔を用い、その変色(硫化)をも取り込んだ制作に継続的に取り組んでいる。今回の展示作品は、シルクスクリーンやサイアノタイプ(青写真)の技法を取り入れることで、作品の時間性がさらに重層的で複雑なものになっている。題材に選んだのは、彗星や天体観測。過去の歴史や古文書の記録などをコラージュ的に描き込むことで、作品が内包する様々な「時間」が多重露光のように折り重なり、響き合う。作品の制作時期によって銀の変化の進行が異なることにも注目してご覧いただきたい。

「Interface」展の作家・作品紹介_a0123573_17562774.jpg

須貝旭《de cometis 1698》

「Interface」展の作家・作品紹介_a0123573_17562891.jpg
須貝旭《for an observation 1》の細部

最後に紹介するのは、「Framework」には出品していなかった作家、栗原亜也子。「オセロペインティング」で知られるHRDではお馴染みのアーティストだが、今回は写真とオセロペインティングを融合させた新シリーズの作品を初めて発表している。身の回りの風景の中のフェンスや格子戸などのグリッドをポラロイドカメラで撮影し、それをオセロの盤面に見立てて、オセロゲームの痕跡をアクリル絵具の小さなドットで積み重ねていく。横から見ると極小の積み石や蟻塚のようにも見えるその「絵画」は、ポラロイドフィルムに焼き付けられた風景を浸食し、撹乱し、あるいは風景に寄り添い、昇華させている。

「Interface」展の作家・作品紹介_a0123573_17562811.jpg
栗原亜也子《グリッドの中の風景》シリーズより

「Interface」展の作家・作品紹介_a0123573_18053068.jpg
栗原亜也子《グリッドの中の風景》シリーズより

***

展覧会タイトルの「インターフェイス」「界面」は、アートを通じた日韓の交流を意味する言葉でもあり、また作品と鑑賞者との間の相互作用の場でもあり、またそれぞれのアーティストが世界を解釈しようとする接触面でもある。展覧会全体としても、また個々の作家・作品のレベルでも、キーワードとしての「インターフェイス」を読み取っていただくことができる展示になっているので、残り少ない会期だけれど、是非お見逃しなく。


by hrd-aki | 2023-03-03 18:29 | ギャラリー
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