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韓国・全州の「和/Harmony」展のこと (3)韓国・全州で開催された国際交流展「和/Harmony」について紹介するシリーズ(?)の第3回目は、前回の第2回目で予告したとおり地元・韓国の出品作家をご紹介。展示そのものにまつわるエントリーはこれが最後になる予定。 韓国・全州からの出品作家は4名。チョ・ヘジュン、ボムジュン、イ・ルリ、ソ・ワンホの4名。イ・ルリだけが女性作家で、他の3名は男性。4人ともに全州出身のアーティストだ。 まずはチョ・へジュンから。チョ・ヘジュンは1972年生まれ。ソウルのK-ARTS(韓国国立芸術総合学校)を卒業したのち、ドイツに渡ってニュルンベルクやシュツットガルトの美術アカデミーで学んでいる。リサーチベースのコンセプチュアルなインスタレーションを主なフィールドとするアーティストで、今回の展示では、自分の父親が韓国軍(の中でも在韓米軍と行動をともにする「カトゥサ」と呼ばれる部隊)に所属していた際の経験談をベースにした《米軍とお父さん》を展示している。面白いのは、この作品で作家のチョ自身は一切「制作」をしておらず、展示されているドローイングは父親の手によるもの、そして油彩画はそのドローイングをもとに職業的肖像画家に依頼して制作したもの、というところだ。今回の展示作品ではないが、祖父と日本をテーマにした作品も制作している。 続いてはボムジュン。1985年生まれで、現在はソウルを拠点に活動しているペインター。キャンバスに油彩で、半透明のレイヤーを重ね合わせるように山々の風景を繊細かつ緻密に描く。山は生命を象徴し、またそれは作家にとっては永遠性や無限を暗示するものでもある。静謐でありながらも揺れ動くような、映像的感覚を感じさせる作品だ。 次のイ・ルリは1992年生まれ。鉄を使った立体作品を制作するアーティストで、ブロックのような小さな幾何学的パーツを溶接して組み合わせ、波打つような軽やかなフォルムを生み出している。一見、鉄でできているようには見えないのに(布や皮革、あるいは樹脂のようにしか見えない)、実際の作品はものすごく重い。その騙し絵的な視覚効果とそこから生じる感覚の違和、音楽的なリズム、小さなユニットの集合体がもたらす社会対個人のメタファーなど、重層的な鑑賞を引き出す彫刻作品となっている。 最後に紹介するのはソ・ワンホ。1982年生まれのペインターで、近年は風景絵画を中心として制作発表を続けている。画面に描かれるのは一見何の変哲もない、特徴の欠如した風景で、アーティストの主観は極力排除されているように見える。それは、声高なメッセージや背景情報を捨象することで、それぞれの鑑賞者の感情や記憶との間に唯一無二の回路を開通させようとする試みなのかもしれない。 * * * といった感じで、韓中日11名の作家・作品紹介はこれにて終了。ジャンルも媒体も主題も形式も多岐にわたり、世代や国籍、文化的な背景も異なる作家たちの作品が集まったグループ展なのだが、確実に「今」の世界、特に「東アジア」の社会文化状況を反映した、質の高い展覧会になったのではないかと思っている。 次回、第4回目以降があるかどうか(書く余力があるかどうか)は今のところはちょっとよくわからないけれど、「食の都」として知られる全州で食べたものを紹介する記事も書きたいなと思っているので、期待せずにのんびりとお待ちいただければと思う。そうそう、もうひとつのチョンジュ、清州のプロジェクトのことも書かなければ!
by hrd-aki
| 2023-10-02 03:31
| レポート
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