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京都・鞍馬口の現代美術ギャラリーHRD FINE ART(www.hrdfineart.com)のディレクターによるアート関係諸々ブログ。時にはアートと無関係な話題もあります。気が向いたら更新。
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地方文化通信:犬島アートプロジェクト (1)

韓国の仁川(インチョン)文化財団が発行している隔月刊の文化批評雑誌「플랫폼 PLATFORM」に、「犬島アートプロジェクト」についてのレポートを執筆する機会をいただいた。サブタイトルとして「Asia Culture Review」を標榜するこの雑誌は、美術から音楽、映画、演劇、文学まで幅広くカバーし、韓国語のみではあるものの日本や中国の展覧会やイベントも取り上げている。

掲載されたレポートは韓国語(僕が書いた日本語の原稿を翻訳者が訳してくれたもの)なので、原文の日本語のレポートをここにアップしておこうと思う。掲載の韓国語バージョンには「アートと経営のオーケストラ」というタイトルがついている。内容的にも韓国の読者を意識していることを前提として読んでいただきたい。

ちなみに朝鮮戦争の上陸作戦の舞台としても知られるインチョンは、現在ではソウルに次いで韓国第2の都市だ。国際空港を抱え、ソウルのサテライトシティとしての位置づけを越えて経済文化面でも発展を続けている(リーマンショックまでは、ではあるけれど)。あとは海鮮がおいしい。

地方文化通信:犬島アートプロジェクト (1)_a0123573_201496.jpg

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***

地方文化通信「犬島アートプロジェクト」

「犬島アートプロジェクト」は、アートを導入した地域振興・再開発プログラムの先進事例だ。建築とアート、環境と歴史など、いくつもの要素を組み合わせ、新たな文化発信を志向するこのプロジェクトは、「ベネッセアートサイト直島」などですでに国際的にも高い評価を得ているベネッセコーポレーションおよびその関連財団である直島福武美術館財団による、新たな活動として注目を集めている。直島とは共通点も異なる点もある、この「犬島アートプロジェクト」についてレポートする。



犬島は中国地方、岡山県岡山市に属する犬島諸島の一部をなす島であり、本州、四国、九州という3つの島に囲まれた瀬戸内海の東部に位置する。犬島諸島は本州から約2.5キロメートルという比較的近距離にあり、犬島のほかに4つの小さな島を合わせ、5つの島で構成されている(そのうちのひとつ、犬ノ島には、うずくまった犬の姿に似た巨石「犬石様」があり、犬島の名前の由来となっている)。諸島中最大の島である犬島も、面積は0.6平方キロメートルと小さく、現在の人口は約55人。島民の平均年齢は75歳で、過疎化・高齢化が極端に進行している土地でもある。

元来良質な花崗岩(「犬島みかげ」と呼ばれる)の産地であり、犬島から切り出された花崗岩は江戸城や大阪城などの石垣にも用いられた。その後、銅を精錬する施設がこの犬島に建設されたのが1909年のこと。原料の海上輸送の利便性や、銅の精錬時に発生する煙害対策のため、当時瀬戸内海上には多くの銅精錬所がつくられたが、犬島もそうした島々のひとつであった(ちなみに、直島も銅精錬所によって発展した島であり、1917年に創業した三菱の銅精錬プラントは現在もなお稼働している)。

大規模な銅の生産を背景に人口も急増し、住宅や飲食店、娯楽施設なども多く建設され、犬島は賑わいを見せた。しかし、銅の国際価格の暴落により生産量は急減、犬島の精錬所はたった10年間稼働しただけで1919年に閉鎖された。島からは人が去り、精錬所の工場建築群も放置され、長い年月の間にただ朽ち果て、徐々に崩壊しながら現在にいたっている。工場の遺構や巨大な煙突などが、富国強兵と重工業化を押し進めた時代のいわば標本として、独特の景観を形成している。

近年、10年ぐらい前からは観光を軸にした島おこしの動きが始まり、海水浴場、キャンプ場なども整備され、「廃墟ブーム」も手伝って観光客を引きつけてきた。2002年には「犬島アーツフェスティバル」の舞台となり、また若手アーティストのグループによるアートイベント「犬島時間」も2004年から毎年開催されるなど、アートと産業遺構を活用した再開発が進んでいる。



こうした動きを背景に、直島福武美術館財団が「犬島アートプロジェクト」のスタートとなる第1期の施設「精錬所」の建設を開始したのが2007年のこと。これよりも10年ほど前から犬島の歴史や風土に注目し、アートプロジェクトの構想を練っていたというから、長期的な視野で慎重に計画されてきた事業であることがうかがえる。

(2)につづく
by hrd-aki | 2009-09-15 20:14 | 雑感
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