京都・鞍馬口の現代美術ギャラリーHRD FINE ART(www.hrdfineart.com)のディレクターによるアート関係諸々ブログ。時にはアートと無関係な話題もあります。気が向いたら更新。
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地方文化通信:犬島アートプロジェクト (3)

(2)からのつづき

ベネッセアートサイト直島とは、ベネッセと直島福武美術館財団が直島で運営するアート活動の総称だ。世界的な建築家である安藤忠雄が建築デザインを担当し、ジェームズ・タレルやウォルター・デ・マリアなどの永久設置作品を展示する「地中美術館」が、そのキーフレームとして機能している。「ベネッセハウス」はアートをふんだんに取り入れた美術館のような宿泊施設であり、また「家プロジェクト」は島内の様々な場所に著名なアーティストを招き、サイト・スペシフィックな作品制作を依頼するという活動だ。これらすべてが総合的に組み合わされて、直島は芸術文化のユニークな発信地へと成長してきた。

このほか、まだ詳細は公表されていないが瀬戸内海の別の島で新たな美術館建設の構想もある。また「瀬戸内国際芸術祭」(仮称)という、フェスティバルの開催も計画されている。これは2010年に第1回が開催される予定だという。

このようにベネッセと直島福武美術館財団の活動の全体像の中で見ていくと、犬島のプロジェクトも、単にひとつの過疎の島を観光開発し、金と人を呼び込もうというような一話完結的な話ではないことが理解できる。ひとつひとつのプロジェクトは、瀬戸内海地域全体に大きな文化的なうねりを生み出そうとするグランドデザインの一部なのだ。すでにエリア近隣に点在している大原美術館(岡山県倉敷市)やイサム・ノグチ庭園美術館(香川県高松市)、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川県丸亀市)などのアートスポットをもネットワークし、アートを軸とした「瀬戸内海文化圏」とも呼べるようなものを構築しようという、壮大な計画の姿も浮かび上がってくる。

さらに見逃すことができないのは、行政がイニシアチブを取って展開するプロジェクトと違い、経営の視点が常にそこにあるということだ。直島の事例にも見られるように、美術館の建物をひとつ建設するだけで完結するのではなく、建築そのものにも価値を持たせ、また町の中にも作品を点在させ、さらには宿泊施設などのインフラも整備することにより、訪れた人々が滞留し、循環できる仕掛けをつくる。犬島でも同様に、グッズなどを販売するストアや、食事もできるカフェが用意されている。ただ単にアート作品を見せるだけの場ではなく、また施設が完成したらそれで終わりでもない。新しいプロジェクトを次々と立ち上げ継続させていくことで、リピーターを増やす工夫も絶えず行われている。

私企業に支えられた組織だからこそ実現できた総合的かつ長期的なプロジェクトの数々は、バブル経済崩壊後の予算削減に苦しんだ公立美術館のあり方とは一線を画すものであり、しばしば「ハコもの行政」と揶揄される日本の文化政策に対するアンチテーゼとして捉えることもできるだろう。



犬島アートプロジェクトは、日本の中でも経済的に取り残されている感のある中国・四国地方、瀬戸内海地方という地域の特殊性、またベネッセという地域に根差した企業の存在、またビジョンを持った行動的な経営者である福武總一郎の存在を抜きにして語ることはできない。氏が、新潟県の里山を舞台に開催される国際アートフェスティバル「大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ」を積極的にサポートしていることも、東京などの中心からではなく、地方をネットワークすることによって新たな文化的価値を創造し、情報を発信していこうという強い意思の表れとして理解することができるのだ。

新たな展開を次々と繰り出し、成長し続ける瀬戸内海のアートムーブメント。犬島アートプロジェクトは2010年の夏に第2期の一部の公開を予定している。

(了)
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by hrd-aki | 2009-09-16 01:32 | 雑感
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