大阪・中之島を中心に開催されている「水都大阪2009」のアートイベントのひとつとして、9月20日と21日の2日間に大阪市中央公会堂で発表された映像インスタレーション「脈/Artery Wall」がとても良かった。
日韓中3カ国のメディア・アーティストが展開する「新視角」というグループ・プロジェクトによる企画で、「水都大阪」の市民公募としての展示だということだったが、参加型のプロジェクトが多い他の展示と比べてもクオリティが高く、2日間で終わってしまうのがもったいないと思えるような内容だった。
「水都大阪」自体については何だかよくわからないところも多いのでここでは省略(大阪府知事と大阪市長が並んでいるあのポスターだけはやめてほしいけど)、また「新視角」についても後述のウェブサイトに詳しいのでここでは省略させていただくが、「脈/Artery Wall」は淀川水系の上流から河口まで各所で撮影した水流や滝の映像を壁面に投影し、録音した水の音を流す、という、言葉にしてしまうとあっさりしすぎて困ってしまうほどシンプルなインスタレーションだ。が、しかし、中央公会堂の重厚で歴史を感じさせる建築(大正期にルネッサンス様式で建てられたものだという)の中で、スクリーンなどを仕立てることなく、柱やステンドグラスの窓や分厚いカーテンのあるそのままの空間いっぱいに大きく投影された水の動きは迫力があり、また天井の高いホールなので流れる水の音も上下左右から包み込むように反響してきて心地良い。
大阪に注ぎ込む淀川の映像と音を通じて水について思いをめぐらせる、という企画コンセプトはもちろん「水都大阪」の一環として有効であるにしても、それにとどまらず、場・空間・映像・音の中に身を置き、それらを同時に体感する、という映像インスタレーションならではの力がストレートに感じられる展示だった。
巨大な空間に映像を映し出すために強力なプロジェクターを使用していたので、ちょうどシルバーウィークの連休でもあり、自分の影を壁に投影させて遊ぶ人たちがたくさんいたのも事実。「勝手に参加型」というか、まあそれもこういう展示の楽しみ方として「アリ」だとは思うけれど。
***
新視角のウェブサイト
http://shinshikaku.com