京都・鞍馬口の現代美術ギャラリーHRD FINE ART(www.hrdfineart.com)のディレクターによるアート関係諸々ブログ。時にはアートと無関係な話題もあります。気が向いたら更新。
by hrdfineart
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
全体
ギャラリー
展覧会企画
アーティスト
イベント
レポート
雑感
おしらせ
未分類
以前の記事
2018年 10月
2018年 09月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 09月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2014年 08月
2013年 12月
2013年 10月
2013年 08月
2013年 05月
2013年 01月
2012年 09月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
最新の記事
次回展覧会:ホン・ジョンピョ..
at 2018-10-17 01:47
関連アーティスト情報【201..
at 2018-10-16 23:20
関連アーティスト情報【201..
at 2018-10-13 04:40
改装のこと (5) 壁紙はがし
at 2018-10-03 03:46
関連アーティスト情報【201..
at 2018-09-18 02:32
最新のトラックバック
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


<   2009年 10月 ( 3 )   > この月の画像一覧

熊本・河原町のこと

熊本市の河原町と呼ばれる一画は、もとは繊維問屋街として栄えていたところだという。今では問屋や店舗はほとんどすべて姿を消し、シャッター商店街も通り越して半ば廃墟のような趣も漂っている。レンガやコンクリートブロックを使った、建築史的にも産業史的にもおそらく面白い史料となるであろう長屋風の建物が狭いアーケードを形成し、ひとつひとつの店舗の間口は小さく、ほぼすべて2階が住居として使われていた。見上げると、プラスチックの波形トタンをいい加減につなぎ合わせた天井=屋根がなんとも頼りなく、同時にたくましくも見え、この場所が経てきた歴史を物語っている。

「今では」と書いたが、「半ば廃墟」というのは今から5、6年くらい前までの話で、その頃から河原町はいわば第二の人生を歩み始めたといっても過言ではないと思う。ギャラリーやクラフトのショップ、アーティストの工房やアトリエが入居しはじめ、かつての問屋街はそのゲニウス・ロキ(地霊)を汲み取りながら「クリエイターの街」として新たな装いをまといはじめたからだ。

11月に荻野夕奈の個展を開催するギャラリーADOはこの河原町にあり、位置的にも機能的にもその中心となっている。オーナーの黒田さんは、河原町のアート活動を推進する「河原町文化研究所」を率いる中心人物だ。ここももともとは衣料品の卸問屋兼住居だったところで、現在は1階はカフェバー、居住スペースだった2階が展示スペースとなっている。

熊本市立現代美術館という良質な現代美術館があるにもかかわらず、市内には河原町以外に現代アートの企画ギャラリーはほとんどないというし、熊本も(日本の他の場所と変わらず)現代美術やアートが盛んな土地柄ではないようだ(そんな土地がいったい日本に存在するのかどうか、そもそも疑問だけれど)。「アートっていうとそれだけで敬遠されてしまうところがあるから、カフェとして営業することでとにかく敷居を低くして、まずは入口としていろんな人に興味を持ってもらいたかった」と黒田さんも言う。そんな狙いは着々と成果を挙げつつあるようで、今年8月にはインスタレーション作家の大巻伸嗣を招いてアートイベントを開催するなど、「クリエイターの街」の活動は奥行きと広がりを増している。

何よりもこの場所に染み着いた歴史、そしてほとんど問屋街という機能だけを果たすためにつくられ、今ではその機能を剥奪された建築の持つ力は、他では得難いものだろう。僕は9月にここを初めて訪れたのだけれど、現代アートの舞台として大きな可能性を持った場所だと思った。そんな場所で荻野夕奈の作品がどのように見えるか、またどう見せられるか、今から楽しみだ。

a0123573_234090.jpg
レンガやコンクリートブロックの建物。

a0123573_2326390.jpg
中はこんな感じ。

a0123573_23262737.jpg
ギャラリーADOの1階、カフェバーのスペース。

a0123573_23264816.jpg
展示室内。上薗隼という彫刻作家の個展が開催中だった。鉄や廃材を使ったインスタレーション展示で、立体的な空間の活かし方が印象的。

***

河原町のウェブサイト
http://www.kawaramachi.net/
[PR]
by hrd-aki | 2009-10-16 23:52 | 雑感

銭湯+現代美術

東京・江戸川橋の銭湯「松の湯」の2階を会場に、「柔らかな器」というグループ展が開催されていた。知人のペインター、しんぞうさん(こんな名前だけど女性、もちろん本名ではない)が参加していたこともあり、使われなくなった銭湯の空間をそのまま展示に利用しているという点にも興味があったので、東京での仕事の折に見に行ってきた(展示はすでに10月4日に終了)。

「松の湯」は早稲田大学からも程近い、「早大通り」から通りを一本入ったところにある銭湯で、現在も営業中。かつては1階と2階で営業していたのが、今では1階だけを使っていて、2階は営業時の内装そのままに空きスペースになっている。このスペースを展覧会に使うのはこの「柔らかな器」展が初めてということで、ただほったらかされているだけの場所を「それなら展示に使いたい」ということで交渉して今回の展示に至ったらしい。

荒れ放題(?)だった場所を展示できる姿に持っていくために、片付けも掃除もすべて参加アーティストたちが自分たちの手で行ったようで、そのあたりの状況はしんぞうさんのブログで詳しく紹介されている。
http://sinzow.exblog.jp/

参加アーティストは工藤春香、黒野裕一郎、塩川彩生、塩谷良太、しんぞう、平川正の6人。いわゆる「9.11世代」、「ロストジェネレーション」などと呼ばれる30代前後の年齢の作家たちで、展覧会のリードテキストには「この世代の感性には、あきらめと期待の混じった感覚、老いた穏やかさと無防備さが同居する、奇妙なやわらかさがあります」とある。僕が共通項として感じたのは、ある意味ナイーブなまでに直截的に「世界」と向き合った表現をしている、というようなことだった。

面白かったのは塩谷良太の目玉クリップをかたどった陶の立体作品。「モノ」の姿カタチが気になって仕方がない、というタイプの作家に見受けられた。しんぞうのペインティングは、個人的には「おかしさ」と「深刻さ」のバランスが収斂されてきている印象で、人間性の内奥に向かう視線の純度というか切れ味が増しているなという感想を持った。

そして何よりも、銭湯そのままの空間の力は想像以上に強いものだった。強い、というよりも頑なな、と言い直すべきかもしれない。古い下足入れ、タイル張りの浴室、赤いビロード調の布張りの壁やシャンデリア風のランプ……。今や銭湯は日常の一部ではなく過去の一部、レトロで特殊な場所としての風情を帯びつつある存在だと思う(僕は実際銭湯通いをした経験がないので、最初からすでに銭湯というものを非日常の異空間として捉えてしまっているのかもしれないけれど)。そんな空間の特殊性を展示の強度として「面白い」以上のところにまで昇華させるのはなかなか難しいものがあるのだろうと思わされた。

今回は展示空間のつくり込みや改装もほとんど許容されていなかったようで、そんな制約の中での現代美術の展示の試みとして、大成功とは言い難いけれどチャレンジとして十分に見応えのある展示ではあったと思う。

a0123573_22421875.jpg
松の湯外観。

a0123573_22423637.jpg
しんぞうの作品展示。

a0123573_22425454.jpg
塩谷良太の作品。

a0123573_22442080.jpg
浴室もそのまま展示スペースとなっていた。

***

「柔らかな器」のウェブサイト
http://yawarakanautsuwa.blogspot.com/
[PR]
by hrd-aki | 2009-10-11 23:22 | レポート

脈/Artery Wall

大阪・中之島を中心に開催されている「水都大阪2009」のアートイベントのひとつとして、9月20日と21日の2日間に大阪市中央公会堂で発表された映像インスタレーション「脈/Artery Wall」がとても良かった。

日韓中3カ国のメディア・アーティストが展開する「新視角」というグループ・プロジェクトによる企画で、「水都大阪」の市民公募としての展示だということだったが、参加型のプロジェクトが多い他の展示と比べてもクオリティが高く、2日間で終わってしまうのがもったいないと思えるような内容だった。

「水都大阪」自体については何だかよくわからないところも多いのでここでは省略(大阪府知事と大阪市長が並んでいるあのポスターだけはやめてほしいけど)、また「新視角」についても後述のウェブサイトに詳しいのでここでは省略させていただくが、「脈/Artery Wall」は淀川水系の上流から河口まで各所で撮影した水流や滝の映像を壁面に投影し、録音した水の音を流す、という、言葉にしてしまうとあっさりしすぎて困ってしまうほどシンプルなインスタレーションだ。が、しかし、中央公会堂の重厚で歴史を感じさせる建築(大正期にルネッサンス様式で建てられたものだという)の中で、スクリーンなどを仕立てることなく、柱やステンドグラスの窓や分厚いカーテンのあるそのままの空間いっぱいに大きく投影された水の動きは迫力があり、また天井の高いホールなので流れる水の音も上下左右から包み込むように反響してきて心地良い。

大阪に注ぎ込む淀川の映像と音を通じて水について思いをめぐらせる、という企画コンセプトはもちろん「水都大阪」の一環として有効であるにしても、それにとどまらず、場・空間・映像・音の中に身を置き、それらを同時に体感する、という映像インスタレーションならではの力がストレートに感じられる展示だった。

巨大な空間に映像を映し出すために強力なプロジェクターを使用していたので、ちょうどシルバーウィークの連休でもあり、自分の影を壁に投影させて遊ぶ人たちがたくさんいたのも事実。「勝手に参加型」というか、まあそれもこういう展示の楽しみ方として「アリ」だとは思うけれど。

***

新視角のウェブサイト
http://shinshikaku.com

a0123573_0494023.jpg
[PR]
by hrd-aki | 2009-10-07 00:59 | レポート