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京都・鞍馬口の現代美術ギャラリーHRD FINE ART(www.hrdfineart.com)のディレクターによるアート関係諸々ブログ。時にはアートと無関係な話題もあります。気が向いたら更新。
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『ラテンアメリカ怪談集』を読む

河出文庫の『ラテンアメリカ怪談集』(鼓直編)という本を読んだ。1990年出版で、どうやらすでに絶版になっているらしい。

メキシコを含めたラテンアメリカの現代文学作家による短編のアンソロジーだ。タイトルに「怪談集」とあるものの、日本語で言うところの典型的な「怪談」は一編もなくて、どちらかというと怪奇譚、怪奇小説、シュルレアリスム的な物語、を集めた短編集という趣が強い。題材も現代的なものが多い。

作品の舞台となる土地も、ラテンアメリカを飛び出して、ヨーロッパに置かれているものもあるし、中国(とおぼしき国)が舞台となっているものまである。ラテンアメリカ出身の作家(あるいはラテンアメリカにルーツがある作家)が書いたもの、というだけの話であって、作品がそのままラテンアメリカ文化を映し出していると感じられるものは存外少ない。

「ラテンアメリカ」と「怪談」の組み合わせで予想するような、現地の古代文明や原住民文化に根差したようなお話を期待して読み始めると肩すかしをくらう。しかし、タイトルの不適合を別にして、この本がコンセプトからして内包する多彩さや逸脱感、矛盾はとても面白く、興味深いものだった。

「ラテンアメリカ」とは何か? ステレオタイプ的なイメージ(マチュピチュ、インカ、インディオ、ラテン音楽などなど)とは別の切り口で、歴史的・文化的に切り離せない強いつながりがあるラテン圏ヨーロッパとの関係性やその断絶に視点を置くことは、「ラテンアメリカ」とは何なのかということを考える上で重要なことのように思う。そしてそれは、程度や方式、経緯の違いこそあれ、ヨーロッパの文化を吸収咀嚼して形成してきた日本現代文化の実体(多彩さ、逸脱感、矛盾)について考える上でもいろいろと参考になるのではないだろうか。

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収録作品のひとつに「波と暮らして」という奇妙な作品がある(奇妙、ということで言えばすべての作品が奇妙なわけだが)。海岸で「ほっそりとして、軽そうな波」と出会い、自宅に連れて帰って同棲生活をすることになる男の顛末を淡々と綴った物語なのだが、このシュルレアリスム的な掌編はメキシコの詩人・小説家オクタヴィオ・パスの手による作品だ。

オクタヴィオ・パスはアメリカ抽象表現主義の泰斗ロバート・マザウェルとの共作による詩画集も出版していて、この詩画集に収録されたマザウェルの版画作品は「オクタヴィオ・パス・スイート Octavio Paz Suite」として知られている。マザウェルは東洋のカリグラフィ(つまり墨書)の影響も受けていて、海の波しぶきを思わせる即興的な筆触の作品も多く制作した。「海辺で Beside the Sea」や「波 Wave」と直截的に題された作品もあり、「オクタヴィオ・パス・スイート」にも波頭の水しぶきを思わせるようなスタイルの作品が数点収録されている。パスの「波と暮らして」を読んでからマザウェルの作品を見ると、女性としての「波」のイメージが重なってきて面白い。

不定形でとらえどころのない自由奔放な存在としての「波」に対して、その精神性に対して、パスとマザウェルともに強い関心を寄せていたのだろうか、などと想像をたくましくしてみる。「波に暮らして」の最後では「波」は凍らされてその自由な不定形さを奪われ、「氷」としてレストランに売り渡されてしまうのだが。

「ウェイターは、さっそくアイスピックで彼女を砕き、ボトルを冷やすアイスペールに氷片を丁寧な手つきで詰め込んだ。」


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ロバート・マザウェル「Red Sea」(アクアティント、1913年)

ロバート・マザウェルの財団のウェブサイト:
http://dedalusfoundation.org/index.php/site/motherwell/
by hrd-aki | 2011-07-23 14:47 | 雑感

〈DEMADO PROJECT〉コレクション展示:チェ・ユンジョン

7月からは韓国人ペインター、チェ・ユンジョン(Choi Yoonjeong)の作品「Remembering, Being Remembered...」をウィンドウギャラリーで展示中。この作品は5月のアートフェア京都でも展示していたものだ。

チェ・ユンジョンは1983年生まれ、20代のまだ若い作家で、アクリル絵具を用いた非現実的かつ幻想的な室内の空間を描き出すスタイルで制作を続けている。以前は色彩も空間構成もよりダイナミックで自由奔放な作品を多く描いていたが、最近の制作ではより静かで緻密な表現に移行していて、奇妙さや非現実感が一見してもわからないようなスタイルになっている。

シュールレアリスム的、という形容が当てはまるのは間違いなくて、均質な筆触やパステル調の色感など、ルネ・マグリットを想起させる部分も多い。毛糸に縛られたインコ(の剥製)や空っぽの鳥籠など、現代社会や人間関係の不安感を暗示するような象徴的モチーフも登場する。

とはいうものの、全体としての画面にはあっけらかんとした明るさがあり、深刻なメッセージを伝えることに重点が置かれているわけでもないことがうかがわれる。韓国の若い世代の作家の多くに見られるような、韓国社会の伝統的な事物・事象のモチーフ(例えば食べ物、伝統芸能の衣装、工芸品などなど)を登場させて現代的なイメージと対比させるような、ストレートな(そして安易な、あるいは表面的な)問題提起の身振りもここにはない。

彼女の作品を特徴づけているものは、シュールレアリスト的な表現手法や絵画言語ではなく、あたかも箱庭や舞台装置の模型のようにその中で様々なイメージが移動し、入れ替えられ、新たに組み合わされていく、そのいわば関係性の「一人遊び」の現代的な感覚にこそあるように思われる。

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「Remembering, Being Remembered...」には2つの両開き窓が描かれている。ウィンドウギャラリーの出窓の中で「窓イン窓」になっているところもこの展示のひとつのポイントとして見ていただければと思う。


***
アーティスト、チェ・ユンジョンについて(HRD FINE ARTウェブサイト)
http://www.hrdfineart.com/art-choi_yj.html
by hrd-aki | 2011-07-17 15:38 | ギャラリー

チャリティーオークション「SILENT @KCUA」

東日本大震災の復興支援チャリティーを目的としたオークションが京都市立芸大のサテライト・ギャラリー@KCUA(アクア)にて開催されている。「SILENT @KCUA(サイレントアクア)」と銘打たれたこのオークションの展示(オークション用語で言えばプレビュー)の初日の今日、見に行ってきた。どうでもいいことだけど@KCUAを「アクア」と読まされるのにどうしても馴染めないのは僕だけだろうか? アットケークアとか言ってしまう人は他にも結構いるのではないだろうか(ちなみにKCUAは京芸の英語表記Kyoto City University of Artsの頭文字をとった略称だ)。

オークションの出品者は卒業生や教員など、京都市立芸大の関係者。有名作家も出品しているし、学生・院生の作品もある。作品はすべてハガキ大までの小品。展示ギャラリー内には小さな仮設の木棚が端から端まで何段も取り付けられていて、そこに作品がズラリと立てかけられて並んでいる。900に迫ろうという作品数だから、これだけでなかなか壮観だ。大半は絵画やドローイング、版画や写真など平面だが、もちろん立体や半立体の作品も少数ながら出品されている。

展示の会期は6日間。その間、3,000円を最低入札価格として入札を受け付け、最高額のビッダーが落札するという仕組み。落札額の全額が義援金として被災地に寄付されるという(寄付先はまだ未定)。「サイレント」というのは、立ち会いオークション形式で金額を競り上げるのではなく、書面での入札なので(つまり声を出さないので)ビッドの金額が他の人にはわからないという仕組みのことを指すようだ。作品にはキャプションもサインもつけられていないので、基本的には誰の作品なのかはわからない、という意味でもサイレントである。「基本的には」というのは、オークションのウェブサイト上には出品作家のリストは公開されているし、かなり、あるいはある程度作品が世に知られている作家の作品の場合には作品そのものがシグネチャーになっているので誰の作品か一目瞭然、というケースもあるからだ。

チャリティーという本来の目的は横に置いて、この展示システムはそれ自体かなり興味深かった。美術館の展覧会では作品を見るよりもキャプションを読むほうに一生懸命になっている人をよく目にするし、作品タイトルや解説パネルを見れば作品のことがすべてわかったような気にもなったりする。しかし、今回のようにあらゆる情報がブラインドにされていると、作品そのものをじっくりと観察しようとするし、しかも高額の買い物ではないにしても入札=購入を意識すればなおさらその吟味も真剣味を増す。鑑識眼・目利きが問われるということにもなる。

アートを通じて震災復興を支援したい・しようという様々な動きの、このオークションもひとつになるわけだが、慈善という大義名分に寄りかかるだけでなく、サイレント/ブラインドというスパイシーな味付けを加えたことでアートのイベントとして十分に魅力的なものになっていると思う。省エネでもエコでもチャリティーでも、単純に「楽しい・面白い」ということは持続可能性を考えればとても重要なことなのだ。

展示と入札は7月10日まで。ウェブサイト上でも作品の閲覧と入札ができる仕組み。だったのだけれど、初日からアクセス集中で(同時に15人までしかアクセスできないという今時珍しく弱々しいサーバーらしい)システムがダウンしたので、入札は展示会場のみで受け付けることになってしまった、とのメッセージがウェブサイトに掲示されている。ということで、泣きっ面に蜂のつもりもないけれど下記のリンクでは今でもアクセス情報などは見ることが(たぶん)できるので、ぜひご覧いただきたい。気に入った作品があって、どうしても会期中に会場に行くことができないという方はFAXでの入札も可能。ウェブで作品が閲覧できるようになればの話だけれど(今これを書いている時点ではNG)。

僕は4点の作品にビッドを入れてきた。さて、どれだけ落札されてくるだろうか? 

http://www.kcua.ac.jp/silent/

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by hrd-aki | 2011-07-06 00:42 | レポート