京都・鞍馬口の現代美術ギャラリーHRD FINE ART(www.hrdfineart.com)のディレクターによるアート関係諸々ブログ。時にはアートと無関係な話題もあります。気が向いたら更新。
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熊本・河原町で何が起こっているか (3)

(2)からのつづき

前回の(2)で「(3)につづく」と言いながら、雑事に追われて永らく更新できずにいたので(まだまだ落ち着いて詳細の分析をレポートできる状況ではないのだが)、当面のつなぎとして(最近なんかこんな台詞ばかり書いているような気もするが)、河原町アワードに引き続いて開催された「アートは熊本の未来に何をもたらすか」と題した座談会について、会場の様子の写真を中心にしてご紹介したい。

座談会の会場となったのは、河原町からほど近い「早川倉庫」という木造2階建ての大きな建物。もともとは醸造所の一部として使われていたようだが、現在は倉庫として、またこのようにイベントの会場として活用されているらしい。大きくて立派な梁が見事な、味わいのある建物だ。

熊本市の幸山政史市長とアサヒビール芸術文化財団局長の加藤種男氏(河原町アワードのゲスト審査員でもあった)の2人の対談を中心に、会場の参加者(100名近くになっていたのではないかと思われる)にも意見を求めたり、アンケートをとって発表したり、という構成で進行していった。

冒頭、市長のスライドプレゼンテーションは残念ながら(2)に書いた理由で拝聴できなかったのだが、全体のテーマとしては、「文化創造都市」をキャッチフレーズとしたまちづくりを推進している熊本市における都市戦略のあり方について、その中でのアートプロジェクトの位置づけについて、様々な角度から考えてみようという設定がなされていたようだ。

市長のプレゼンテーションに続いて行われた、加藤氏のスライドプレゼンテーションの様子。

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その後、休憩を挟んで、後半は熊本市内で市民参加型の(いわゆる町中活動的な)アートプロジェクトを展開している各団体の紹介があり、さらには会場の参加者にも意見を求めながらのディスカッションが行われた。熊本がどのような街を目指していくのか、その中でアートが果たすべき役割は一体何なのか、というような茫漠たる問いに向かって多種多様な意見が出されていた。

その中では、「プロのアーティストとして生きるというのはどういうことか」とか、「アーティストを経済的に支える仕組みは可能か」といったような問題提起もなされたりして、自分がいつも考えている問題を再度整理する必要を感じながら聴かせてもらえたので、僕にとってはとても有意義な時間となった。

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***

今回の座談会でも、また昨年の「九州アートマン会議」でも提出されることのなかった、しかし非常に重要な視座がある。ここで、簡単な思考メモとしてその問題をまとめてみたい。それはすなわち、アートプロジェクトを「サポート」する立場の行政サイドと、実際のアートプロジェクトを運営管理する側と、またそこに参加して制作や発表活動を行うアーティストと、この3者を共通のベクトルに束ねることは、実は非常な困難さを伴い、ほとんどの場合不可能なのではないか、ということだ。

ここでの第3身分=アーティスト(広い意味で捉えるとデザイナーやイラストレーター、職人などの製造業者的クリエイターも、ファインアートの作家やミュージシャンやダンサーなどの表現者も含まれるのだが、前者については表現活動を行うアーティストというよりも業者や企業と考えたほうがこの場合には妥当であり、発注・受注関係で主体性なく行動する「業者」は上記の3者のいずれの「主体」にもあてはまらないので除外して考えたい)は、個人的な動機に基づいて表現を行う、いわば恣意的な活動主体というのが本来の姿であって、まちづくりなどのコミュニティ活動にコミットすることのメリットは、あくまでも個人的な目標達成に利用できるかどうかということでしか判断できないということを理解しておかなければならない。

もちろんコミュニティとの関わりをベースとした表現者も存在するが、数から言えばそれはあくまでも少数であり、それらのアーティストにしたところで(公務員ではないのだから)コミュニティ活動の成果を自らの作家活動の成果よりも上位に据えているわけではない。言い換えれば、地域が活性化すれば、自らの名声や活動の評価など二の次、などと考えられるアーティストは(定義上)存在しないということだ。定義上、というのは、もしもそのように主張するアーティストがいるとしたら、それはアーティストというよりも社会活動家として定義されるべきだからだ。あるいは、この場合に限って言えば自主的公務員的活動家と名付けてもよい。それを敢えてアーティストと呼ぶならば、それはアートプロジェクト専用、あるいはまちづくり専用・まちおこし専用のアーティスト、ということになるだろう。

アーティストがコミュニティの再生や活性化に寄与する活動に参加することのメリットは何なのか? 繰り返しになるが、それは、アーティストの個人的な成功につながるような社会的な露出を得られる、あるいはその可能性がある、ということでしかない。そしてその活動は、行政のサポートを得る限り(つまり税金による裏付けを得る限り)において、あくまでもPC(ポリティカル・コレクトネス=政治的に適切であること)の範囲を逸脱できない。当然ながら社会規範に挑戦するような表現も、政治的に強い主張を帯びた、偏向した表現も許容されないだろう。ということはつまり、去勢された、あたりさわりのない、面白みのない表現しか生まれてこない、ということになるのだ。それは果たして社会が「アーティスト」に求めるべき役割なのだろうか?

もちろんここに述べたようなことはあくまでも理屈の上のことであり、個々のアーティストはこうした状況下でもうまく身を処す方法を心得ている。アートプロジェクトが社会的要請に合致するように提示するベクトルに、表面上、ベクトルを合わせてみせることなど軽々とこなせるアーティストも多いだろう。表面上のベクトルは、しかしあくまでも表面上のベクトルでしかなく、本質的なベクトルの方向とはあまり関係がない。そして、少し飛躍するようだが、この本質的なベクトルのズレから「利用」と「搾取」の関係が生まれてくる。

***

河原町の「アートのまち」の活動についてのレポートから内容がどんどん離れてしまうので、「思考メモ」についてはこのあたりにとどめておきたい。まだまだ整理が必要なテーマなので、また機会があればこの問題については突き詰めていきたい。

いずれにしても、「アートは熊本の未来に何をもたらすか」という今回の座談会の問いは、そのまま「熊本」を様々な地域に置き換えて、あるいは「日本」に置き換えて、より根源的な問いへと思考を深化させていくきっかけになるのではないかと思った。いや、ぜひともそうしていかなければならないと感じている。

「熊本・河原町で何が起こっているか」の項、ここでいったん了
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by hrd-aki | 2011-10-22 02:06 | 雑感