京都・鞍馬口の現代美術ギャラリーHRD FINE ART(www.hrdfineart.com)のディレクターによるアート関係諸々ブログ。時にはアートと無関係な話題もあります。気が向いたら更新。
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PRAY FOR KOREA?

アートに関係ないことをあまり続けて投稿するのは気が引けるのだが、韓国ではこれまでたくさん仕事をさせてもらってきたし、今でも韓国にはたくさんの友人がいる。国として(国家として)好きかと言われるとやや答えをためらうけれど、韓国の人たちは大好きだし、韓国の食べ物も大好きだ。だから敢えて書いておこうと思うのだけれど(日本語だからどこまで伝わるかわからないし、伝わらなかったらそれでもかまわないのだが)、「PRAY FOR KOREA」というスローガンはやめたほうがいい。

パリでのテロ事件に対して、犠牲者との連帯を示す「PRAY FOR PARIS」というスローガンがネット上にあふれている。それと偶然時期を同じくして韓国ソウルで起きた反政府・労働組合系のデモ隊と警察機動隊との衝突、それによって負傷者が出たことに対して「PRAY FOR KOREA」というスローガンが韓国人の友人の間でたくさん共有されているのを目にした。

しかしこれははっきり言ってどこかズレている。だからやめたほうがいい。

現政権への批判から歯止めが利かずに暴走したデモ隊に対して、警察権力がさらに上を行く暴力的な実力行使に出たこと自体は憂うべき事態だし、公権力が市民の生命を危機にさらしたことは非難されてしかるべきだろうとは思う。しかしそれは決して「祈り」にはつながらないと思うのだ。

「PARIS」がテロ攻撃の対象として傷ついた人々を象徴するキャッチワードになっており、そしてそれが(パリという都市だって決して一枚岩ではない、ということは承知の上で)一定の論理性を持っていることにはそれほど疑いの余地はない。それに対して、「KOREA」は決してそういう存在ではない。ここでは、攻撃した側も攻撃を受けた側もどちらも「KOREA」であり、我こそが「KOREA」であることを主張しているからだ。だから衝突が起こった。デモ隊が退陣を要求した朴大統領も間違いなく「KOREA」の一部であって、それだけでもすでにこのスローガンは論理的に大破綻している。それに、どちらか一方が理性的に行動しさえすれば簡単に防ぎ得た事態に対して、外部の人間は憐れみや驚きは感じこそすれ、祈りや連帯感の行き場などどこにもない。

大変失礼ながら、「PRAY FOR KOREA」には、たまたま時を同じくして世界を駆け巡った「PRAY FOR PARIS」の安っぽいパロディみたいな響きさえある。

自分の国のことは敢えて棚に上げておいて言うのだが、韓国の大統領は選挙で選ばれている。デモ隊を暴力的に鎮圧する大統領も数年前に選挙で選ばれた。そして、今回のような「ソウル市庁舎前広場放水銃事件」は、これまでも何度も何度も、誰が大統領であっても、繰り返されてきたことだということを思い出す必要がある。

「私たちは酷い目に遭っている!」と犠牲者を気取るのではなく、そろそろ自分たちが変わる・変えることを考えたほうがいい。あなたが使うべきスローガンは「PRAY FOR KOREA」ではなくて「CHANGE KOREA」であるべきなのだ。

自戒を込めて。
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by hrd-aki | 2015-11-15 23:44 | 雑感

パリ、1996年、2000年

22歳の3月にパリに数日間滞在した。1996年のこと。初めての海外だった。地下鉄を乗り間違えたりして、サンラザール駅近くのホテルに到着したのは深夜のことだった。ホテルのフロント係の若者は、僕が美術史の学生だと話すと、自分はバスチーユの近くで現代美術のギャラリーを運営していて、収入のためにホテルでアルバイトをしているのだ、と話してくれた。その当時は現代美術には全くと言っていいほど興味がなかったし(だから彼が住所を教えてくれたギャラリーにも行かなかった)、自分もいずれギャラリーをやることになるなどとは夢にも考えていなかったのだから、不思議なものだ。

2000年、再びパリを訪れた。今度は旅行代理店のフリーツアーみたいなものを利用したので、帰国の日にはホテルから空港までの送迎サービスがついていた。安ホテルの狭いロビーで待っていると、現れたのは上下アイボリーホワイトのスーツに身を包んだ細身のかっこいい若者だった。まだ十代かと思うくらいの見た目で、僕も若く見える(見えた)ほうだけれど明らかに彼は僕よりも年下だった。肌の色からも身なりからも北アフリカ系であることは疑いようがなかった。なまりはあるものの英語をすらすらと話す。「ミスター・アハダは君か?」と聞いてきた。HARADAをフランス語的に発音するとそんな感じに聞こえるのだ。

彼が乗ってきた車はごく普通のセダンで、自家用車といった趣だった。きっと自分の車をこうして仕事にも使っているのだろう。今日乗せる客は僕一人なのだという。空港までの数十分間の二人きりのドライブで、自然といろいろ話をした。名前も聞いたような気がするけれど、もう忘れてしまった。自分でアルジェリア出身だと言っていたような気もする。

日曜日のパリはお店がほとんど閉まっていて困った、と話すと、それは今が「パック」だからだ、と言う。「パック」というのはイースターのことだ。4月下旬、確かにちょうどその年のイースターの時期に当たっていた。そう言われるまで全く意識していなかったので、なるほどと思い、フランスではイースターにはいろいろお祝いしたりするのか、と訊いてみた。返ってきた言葉は、「オレはムスリムだからよく知らないよ」というものだった。

なんだかとても失礼な、無神経な話をしてしまったようで、自分が恥ずかしくなった。ところが彼は特に頓着する様子もなく、話の流れそのままに「日本にはムスリムはたくさんいるのか?」とか「君はどんな宗教を信仰してるんだ?」などと質問してきた。僕が無宗教だと答えると、「神は信じたほうがいい。どんな神でもいいからね」と、大真面目な顔で忠告してくれた。ちょうどそのタイミングで車がシャルルドゴール空港に到着したことを覚えている。あるいは、ターミナルの前に車を停めて、僕の荷物を下ろしているときにそんなことを言ってきたのだったかもしれない。

当時は中東情勢の中心はパレスチナで、今ほど全体的に混迷を極めてはいたわけではないけれど、ヨーロッパではアフリカや中東からの移民の増大とその社会的受容がすでに大きなテーマになっていた。この2年前の1998年に母国で開催されたワールドカップで優勝したフランス代表チームは(アルジェリア系移民の子であるジダンをはじめとして)移民やその子孫が大半を占めていて、多文化主義を象徴しているとして話題になったりした。15年前も、15年後の今も、問題の本質は大きくは変わっていないように思う。

19年前と15年前。その後も何度か訪れたけれど、パリは何か僕の中に特別な感情を抱かせてくれる場所になっている。
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by hrd-aki | 2015-11-15 02:36 | 雑感